以下、「住宅建築」(建築資料研究社)2001年2月号より抜粋


深草の家

  京都府/Tさんのお宅
  延床面積/193.90平方メートル
  設計/泉幸甫建築研究所
  施工/ツキデ工務店


 「え?なんで僕が?」と仕事の依頼を受けたとき思った。京都には建築のみならず、永い、素晴らしい伝統があるし、束もんがわざわざ出向いてつくることもないはずだ。ところが話を聞いてみると、今や京都でも新築はハウスメーカーの家ばかりとのこと。なるほど僕らが見ている京都は名所旧跡ばかりで、その周りには、あの素晴らしい伝統とは程遠い建物ばかり。数寄屋の伝統が残るには残っているが、庶民には手の届かない超高価な名人芸におちいっている。
「うーん、そうか、じゃあ一丁やってみるか」となった次第である。
とはいえ、関東での仕事は、いつもつきあっている職人や、製作部品の供給者がいるので、とてもやりやすく、できあがりにも自信が持てる。しかし遠い現場となるとそうはいかない。最近は遠い地方の仕事もかなり手掛けているが、まずはいい工務店探しから始めなければならないし、現場へ出掛ける回数も、むしろ地方の現場の方が多くなる。しかし、この現場は建築会社の努力もあって、いいレベルに達することができた。いつもつきあっている左官屋を指導のためにつれて行ったり、製作部品の一部を送ったりしたこともあったが、職人の質は「さすが、京都」と思わせるものがあった。
この伝統がせっかくあるのだから、あの美しい町並みを甦らせる住宅生産の再構築を考えなければならないのではないか。それは京都ばかりの問題ではない。(泉 幸甫)

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